Q 休業補償給付の事で伺います。先般、当社従業員が鉄材運搬中事故で左足を骨折し、全治一カ月の重傷を負いました。業務上の負傷として労災保険から平均賃金の八割相当額の休業補償がなされると思われますが、当社ではこの八割に二割分を上積みして十割の賃金保障をしようと考えています。しかし、健康保険の傷病手当金は会社が何割かの賃金を支払うとその分だけ減額されるころになっていますが、労働保険の場合はどうなっているのでしょうか。
その点を詳しく教えてください。 |
A 六割未満の賃金支給なら休業補償は全額給付
労災保険法第十四条では、休業補償給付について、「労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のためにろうどうすることができないために賃金を受けない日の第四日目から支給するものとし、その額は、一日につき給付基礎日額の百分の六十に相当する額とする」としています。さらに、休業に対してはこの休業補償給付に加えて、労働福祉事業の一環として、休業特別支給金が給付基礎日額の百分の二十の額をもって支給されます(労災保険特別支給金支給規則) ところで、ご質問は貴社が休業補償給付に賃金を上積み支給する場合、労災保険の給付が健康保険と同様に制約されるかということのようです。労働基準法第七六条では労働が不能な場合に平均賃金の六割以上の賃金を支払った場合には使用者は休業補償を行わなくてもよいとしています。労災保険法の考え方もこれと同じで、会社が平均賃金の六割以上の賃金を支払えば、その日は「休業する日」とはみなされず、労災保険の休業補償給付は支給されません。逆に六割に満たない額の賃金を支給した場合は、労災保険法から休業補償給付が全額支給されるわけです。 ですから、会社が平均賃金の六割未満の額の賃金を支払ったとしても、労災保険からの支給が制限されるころはありません。極端は話ですが、会社が五割九分の賃金を支払っている場合は、労災保険からの休業特別支給金を含めて合計平均賃金の一三割九分の金額が被災者の手に入ることになるわけです。しかし、各企業での取り扱いを見ますと、ご質問の場合のように休業特別給付金を見込んで二割支給し、合計十割の賃金補償にするという規定が多いようです。 ご質問では、健康保険の傷病手当金のことを引き合いに出されていますが、傷病手当金については、「傷病にかかり、負傷し、又は出産した場合において報酬の全部又は一部を受け入れることができる者に対しては、これを受けることが出来る期間は、傷病手当金又は、出産手当金を支給しない。ただしその受け取ることができる報酬の額が、傷病手当金又は、出産手当金の額より少ないときは、その差額を支給する」(健康保険法第一〇八条)と規定しています。すなわち、傷病手当金は会社から六割未満の賃金支給があれば、その分だけ減額されて支給されるわけです。この点、労災保険の休業補償給付と健康保険の傷病手当金の支給の仕方は異なっていますので、取り扱い上留意することが必要です。 |