西宮労働基準協会

■ルールを守ろう!安全整備有効保持と作業開始前点検

●ルールを守ろう!安全整備有効保持と作業開始前点検
足場組立の後の点検及び作業開始前の点検が未実施であったため、作業構台の支柱(H型網)に接合されたブランケット足場とともに地価へ落下
業種:建設業 
被害休業3カ月 1人 不休1人
災害発生状況 
作業員Aは作業構台の支柱(H型網)に緊結金具(以下クランプという)を使用して設置されたブランケット足場上で作業構台の筋かい等の組立て作業を行っていたところ、支柱(H型網)からクランプが外れブランケットが外れたことにより、ブランケット上の鋼製作業床(長さ7m、幅56cm、重量193kg)とともに、3m下方の地面に墜落し負傷した。(右脛骨折、休業3カ月)また、落下した鋼製作業床が別の作業員に激突し、背部を打撲した。(不休)
災害発生原因
①クランプの締付けトルクが不足していたこと。
②作業を開始する前にクランプの締付け状態を点検しないで、ぶらんけっと足場を使用させたこと。
再発防止対策
①足場組立時にクランプの締付けトルクを確認する事
②足場を利用して作業を開始する前に、クランプのゆるみの状態を点検し、異常を認めた時は、直ちに補修すること。
 墜落防止用水平ネット(以下水平ネットという。)の作業開始前点検が未実施であったため、水平ネットとデッキプレートの隙間から段下に墜落
業種:建設業 
被害:休業1カ月 1人
 災害発生状況
作業員Aは、安全帯を使用せずデッキプレートを移動中、バランスを崩し墜落防止用水平ネット上に墜落した。水平ネットの一部分が吊クランプに設置されていなかったことから、水平ネットとデッキプレートの隙間から階下のフロアーに墜落し負傷した。(右足首骨折、休業1カ月)
なお、前日、資材の搬入で水平ネットの一部を取り外したものであったが、現状に復していなかったものであった。

災害発生原因
①安全帯を使用していなかったこと。
②資材の搬入後に水平ネットを現状に復していなかったこと。
③作業開始前に、水平ネットの設置状況を点検していなかったこと。
再発防止対策
①安全帯を使用すること。
②資材の搬入等で水平ネットの一部を取り外した場合、その必要がなくなったときは現状に復すこと。
③作業を開始する前に、水平ネットの設置状況を点検し、異常を認めた時は、直ちに補修すること。

■22年の熱中症による死亡災害発生状況

●22年の熱中症による死亡災害発生状況
昨年の熱中症による死亡は全国で47名にのぼり、過去10年間で最も多く、それまで最多であった平成13年(24件)のほぼ倍となりました。業種別では、建設業17名、製造業名農業6名運送業2名、警備業2名、林業1名、その他業種10名です。製造業、運送業、その他業種の発生状況概要を下記に掲載します。
 

製造業せ発生したもの

番号 年代 災害の概要
30歳代 被災者は、建屋内において、コンクリート型枠の組立作業に従事していたが、午後4時過ぎに倒れ、そのまま死亡した。
30歳代 被災者は、クリーニング工場内において、洗濯物の投入作業に従事していたが、午後0時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
40歳代 被災者は、工場内において、治具の片付け作業に従事していたが、午後3時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
40歳代 被災者は、工場内において、機械設備の調整作業に従事していたが、午後7時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
40歳代 被災者は、工場内において、射出成形機取扱作業に従事していたが、午前0時すぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
40歳代 被災者は、工場内において、勤続製品の研磨作業に従事していたが、午後4時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
 40歳代  被災者は、工場内において、手押し車の製造作業に従事していたが、午後2時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
 50歳代 被災者は、工場内において、マスキング作業に従事していたが、午後0時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。 
 50歳代 被災者は、工場内において、清掃作業に従事していたが、午後7時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。 

製造業の全ての事例で、自覚症状の有無にかかわらず、水分、塩分の補給を行わせる措置がありませんでした。また、8人の事例でWBGT測定に基づく予防対策がありませんでした。

運送業で発生したもの

番号 年代 事業の概要
40歳代 被災者はトラックヤードにおいて、荷下ろし作業に従事していたが、午前10時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
60歳代 被災者は、事業場内の屋外において、ミキサー車の修理作業に従事していたが、午後1時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。

 

その他業種で発生したもの

番号 年代 事業の概要
30歳代 被災者は、工場内において、家電製品の解体作業に従事していたが、午後4時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
30歳代 被災者は、トラック運転配送業務に従事していたが、午後4時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
30歳代 被災者は、自転車で新聞配達を行っていたが、午後4時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
40歳代 被災者は、事業場の資材置き場において、資材の分別作業に従事していたが、午後5時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
50歳代 被災者は、ゴルフ場において、コースの整備作業に従事していたが、午後3時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
50歳代 被災者は、事業場の敷地内において、ゴミ回収作業に従事していたが、午後4時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
50歳代 被災者は、自動車整備工場内において、車両の修理作業に従事していたが、午後4時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
60歳代 被災者は、工場内において、再生資源の選別作業に従事していたが、午後4時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
60歳代 被災者は、養鶏場において、採卵作業に従事していたが、午後2時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
10 70歳代 被災者は、事業場の野外において、除草作業に従事していたが、午後4時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。

平成22年の発生の特徴は次のとおりです。

・全体の53%(25名)が7月に発生しており、気候の変化に体の熱順化が追いつかなかった可能性があります。また、全体の約43%(20名)が午後3時~4時台の発生です。

・全体の63%(30名)が作業開始から3日目までの発生です。また、61%(29名)が作業開始10日以上での発生です。

発生防止の措置のポイントとして次の事項を考慮してください。

・WBGT値を計測し、これを指標として作業の管理を行うことが望ましい措置です。

・水分・塩分の摂取確認表などにより、自覚症状の有無にかかわらず定期的に水分・塩分の補給を行う事を管理することが必要です。

・事務室内については、省電力に取り組む場合でも出来る限り室温28℃を維持し、扇風機の使用など冷房効果の向上に取り組むことが必要です。

■清掃作業中自動車に轢かれ死亡

●清掃作業中自動車に轢かれ死亡
業種:清掃業

被害:死亡1名

災害発生状況

当時の天候は、小雨であり、薄暗い状況であった。被災者は、駐車場入り口を横断する側溝のグレーチング(格子状蓋)を取り外し、しゃがみこむ姿勢で側溝右側付近の内部の清掃を行っていた。

この時、当該駐車場に入るため、駐車場に向かって右方向から普通自動車(加害車両)が右折して来たため、同自動車に轢かれ死亡したもの。

発生場所の状況

発生場所は駐車場入り口で、センターライン無しの6m道路からT字状に入り口がある。入口から向かって左側が車両の駐車スペースで右側は駐車操作等のための道路である。駐車場周囲と道路は縁石があり、これに沿って、高さ約75cmの生垣が植栽されている。

災害発生原因

被災者の位置・姿勢は、加害車両位置の運転者からは、生垣と車両のピラーによる死角に入り、被災者はほとんど視認出来ない。また、被災者からも走行してきた車両は視認出来ず、双方が視界に入っていた。発生時の車両の走行速度は時速5km程度で、駐車操作を容易にするため道路の比較的右側を走行し、右側の生垣に沿うように駐車場へ向け右折したため、運転者からの死角はさらに広がった。

再発防止対策

1 車両が行った右折動作は、いわゆる「右折の早回り」であり死角が増え、事故の原因となる。本来右折動作は交差部中央付近まで十分に直進し、進行方向の状況を確認した後に右折動作を開始することが基本である。今回も本来の車両位置であれば作業を行っている被災者を視認出来た可能性が高い。

2 時速5kmは徐行と考えられ、その停止距離は約1.24m程度であり、駐車場通路の全幅を視認してから右折すれば、被災者と接触する前、または接触したとしても最悪の事態は避け得た可能性が高い。

3 作業中は通行を遮断し、警備員等を配置することが最も望ましい措置である。

4 作業予定箇所・日時の周知を徹底する、作業箇所付近に作業中である旨の表示を行い、注意喚起する必要があると考えられる。

■交通整理中、後進してきたドラグ・ショベルに轢かれ死亡

●交通整理中、後進してきたドラグ・ショベルに轢かれ死亡
業種:建設業
被害:死亡1名
災害発生状況

本災害は、公道での電気ケーブル埋設工事にともない交通整理を行っていた作業員が、後進してきたドラグ・ショベルに轢かれたものである。
災害発生当日の作業内容は、片側三車線んおうち左側一車線の一定区間をカラーコーンで規制して、午前10時からドラグ・ショベルを使用し、路面の堀削を行い、電気ケーブルの埋設、埋め戻しを行って、アスファルトを再度舗装する予定となっており、午後4時30分には終了する予定であった。
被災者は、午後10時から、カラーコーンで規制した区画の端で交通整理を行っていたが、午後からの作業で、ドラグ・ショベルの旋回時にドラグ・ショベルの後部が車線にはみ出すおそれがあり、隣車線を通過する車両との接触を防止するため、ドラグ・ショベルが作業する付近に自らの判断で立ち入り、その後、交通整理を行っていた。
午後2時30分にドラグ・ショベルによる埋め戻し作業が終了。次のアスファルト舗装の資材を搬入するため、資材運搬用トラックを作業現場に進入させるスペースを確保すべくドラグ・ショベルを後進させたところ、3乃至4メートル離れた箇所にいた被災者を轢いてしまった。
被災者は、すぐに病院に搬送されたが、内臓破裂のため午後5時に死亡した。
ドラグ・ショベル運転者は、整地、運搬、積込み用及び堀削用の車両系建設機械運転技能講習を修了していた。しかし、現場では作業手順、連絡合図等について決められたものはない状況で作業が行われていた。

災害発生原因

①車両系建設機械に接触するおそれがある箇所に作業員を立ち入らせたこと。また、その危険個所に誘導員を設置せず、安全確保をしていなかったこと。

②車両系建設機械を用いて作業を行うにもかかわらず、車両系建設機械の運行経路等の計画を作成せず、作業内容の事前打ち合わせを十分に行っていなかったこと。

③関係労働者に安全教育を十分に行っていなかったこと。

再発防止対策
①作業員と車両系建設機械との接触を防止するために立ち入りを禁止すること。または、誘導員の配置を行うこと。
②車両系建設機械を用いて作業を行うにあたっては、車両系建設機械の運行経路等の計画を作成し事前に作業における危険性及びその対策の検討し、その対策を作業員に周知徹底すること。
③作業員の危険に対する感受性を高め、安全意識の高揚を図ること。

 
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